スタファ島とフィンガルの洞窟 Staffa and Fingal’s Cave

2019年 9月25日 15:00 (GMT)

荒々しく揺られるボートは霧に包まれていた。 聞こえるのはごうごうと響く波の音、そして、眼前には雄大に連なって聳え立つ石柱と、波飛沫を飲み込む巨大な空洞

フィンガルの洞窟である。

フィンガルとは、アイルランドの伝説上の巨人である Fionn MacCaul (ゲール語でFingal) に因んでおり、1772年にイギリスの博物学者ジョゼフ・バンクスによって報告されて以降、広く知れ渡ることとなった。 その驚異の光景に魅了され、ジュール・ヴェルヌ、ウォルター・スコット、ロバート・ルイス・スティーヴンソンなど数多くの著名人や、ヴィクトリア女王も訪れたという。

Introduction

フィンガルの洞窟は、高さ約18m、幅約15m、長さ約70mにも及ぶ、スタファ島で最大の海食洞である。

島と洞窟の景観を特徴づけているのは、the Great Face of Staffaと呼ばれる柱状節理の石柱群で、約5億9千万年前の火山活動の期間に形成されたと言われている。

洞窟内では流れ込む波の音が反響して独特な音が鳴るため、現地人達はゲール語で「歌の洞窟」と呼んでいたようである。 1829年8月、島に上陸したドイツの作曲家フェリックス・メンデルスゾーンは、洞窟の音からインスピレーションを得て、翌年に序曲『ヘブリディーズ諸島』(通称『フィンガルの洞窟』)を作曲した。

The Hebrides(Fingal’s Cave), Op.26, Felix Mendelssohn by Musopen

今回は、フィンガルの洞窟に辿り着くまでの私の旅の記録を紹介する。

2019年 9月24日

スコットランドの首都エディンバラから出発し、ハイランド地方西部とマル島・アイオナ島を巡る3泊4日のツアー(Rabbie’s Tours)に参加し、オプショナルツアーでスタファ島へと向かうことにした。

Location

スタファ島(Staffa)は、スコットランドの西海岸沿いのインナー・ヘブリディーズ諸島と呼ばれる地域に位置している、小さな無人島である(赤丸)。その南にあるアイオナ島 (Iona)は中世時代の修道院跡(Iona Abbey)で有名で、港の周辺には民家や宿があり、スタファ島への船も出ている(黄丸)。スタファ島の東にあるマル島(Mull)は荒涼とした自然が豊かで、中心の町であるトバモリー(Tobermory)は観光地となっている(緑丸)。

Mull -Tobermory-

カラフルな家々が鏡のような水面に映り、霧雨の合間に現れる虹と相まって、色彩鮮やかで美しい街並みとなっている。この綺麗で穏やかな港町に3日間滞在した。

丘の上を散策し、縞々の島猫と戯れる。

‘’Welcome to Tobermory!”

宿泊した Copeland House の近所にいた猫。人懐っこくすり寄ってきた。

港町といえば新鮮な海の幸。レストラン Cafe Fish で旅の仲間達と魚介料理を味わった。

Mull -Great landscape-

ツアーガイドさんとマル島の展望スポット

Highland Cattle

スコットランド原産の長毛種の牛。悠々自適に人々と共生している、アイコン的な動物。マル島では道路を闊歩している姿を見ることができる。

Calgary Art in Nature

Departure

Mull Fionnphort

2019年 9月25日 12:00 (GMT)

マル島を出発するフェリー Caledonian MacBrayne に乗り、アイオナ島(写真左奥に薄く見える島)へ向かう。

Iona

アイオナ女子修道院の食堂跡。修道院は13世紀頃に設立され350年以上もの間栄えたそうだ。上方の野原には羊がい

アイオナ島は40分程見て回った。お土産屋では羊毛製品やアート作品が売られていた。

アイオナ島の港。写真右上に見えるボートに乗って、スタファ島に出発する。Staffa Trips のツアーボートで、乗船料は£35(約5000円)。

13:50 (GMT)

マル島から乗ってきたフェリーの別便を見送りながら、アイオナ島の港を徐々に離れてゆく。

19世紀、スコットランド出身の作家ロバート・ルイス・スティーヴンソンは、よくこの地を含むヘブリディーズ諸島を訪れたそうで、小説『Kidnapped』にはその影響が濃く表れているそうだ。

火山活動によって生まれた白色と赤茶色のマーブル模様の岩面にも圧倒される。

Staffa

15:00 (GMT)頃、ようやく目的地であるスタファ島が見えてきた。天候は霧雨で波は穏やかではないが、期待で胸が膨らむ。

MacKinnon’s Cave

スタファ島で2番目に大きい海食洞(長さ約67m)である。アイオナ修道院最後の修道院長であった Abbot John MacKinnon に因んで名付けられた(写真左)。

The Boat Cave

波が穏やかな時のみ、小さなボートで近づくことができる海食洞(長さ約46m)である(写真右)。

Fingal’s Cave(フィンガルの洞窟)

想像していたものより何倍も高く大きな石柱が連なっていた。その名の通り、巨人のごとく圧倒的な存在を仰ぎ見て、言葉に表せない感動に包まれた。天候が良く波が穏やかな時は上陸し、六角形の柱状節理の岩床を見ることができるのだが、今回は運に恵まれなかった。次にスコットランドへ行く機会があれば、再挑戦してみたい。

今回の旅では、目的であったスタファ島とその周辺の柱状節理を堪能し、大自然と火山岩の織りなす何億年にも及ぶダイナミックな営みを肌で感じることができた。同じ柱状節理でも、アイルランドのジャイアンツ・コーズウェイや日本の東尋坊など、訪れたい場所は山ほどあるし、違った良さがあるだろう。

奇岩の光景に魅力を感じるなら、一生に一度はフィンガルの洞窟から直接パワーを受け取ってみるのもいいかもしれない。


今回お世話になったツアー

Rabbie’s Tours – Magical Mall, Isle of Iona & West Highlands

https://www.rabbies.com/en/scotland-tours/from-edinburgh/2-4-day-tours/magical-mull-isle-of-iona-west-highlands-4-day-tour

Staffa Trips

https://www.staffatrips.co.uk/

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